
竿燈祭りが「ねぶり流し」と呼ばれていた頃の話。提灯屋夫婦が絵付けをしているのを熱心に見ている陽太という子供がいた。主人の源吉が「提灯の絵には皆大事な意味がある」と講釈しながら絵を描かせてみるとなかなか筋がいい。陽太は孤児仲間と一緒に暮らし、亡くなった両親の事は覚えていない。いつか自分で竿燈を上げて、元気な姿を星になった両親に見て貰いたいと思うようになる。一方、町一番の呉服屋の娘ゆきには鳶職をしていた恋人がいた。身分違いだと親に反対され「七夕までに結納金を稼いで来る!」と北前船に乗り込むが、程なく船が沈んだと報せが届く。「もう忘れろ!」と父親に別の縁談を迫られるが、ゆきのお腹には新しい命が宿っていた。誰にも言えずに悩むゆき。陽太はゆきを励まそうとゆきの家に忍び込み、心を込めて描いた絵を贈ったが、かえって運命の歯車が狂い始める。
七夕の夜、願いを込めたねぶり流しの提灯は、果たして空に輝くのか。