ものがたり

南北朝の動乱が、いまだ続くころの大和。

観阿弥は、献身的な妻菖蒲に支えられ、「人の心を打つ芸」をしたいと研鑚を積んでいた。そんな時、観阿弥は人買いから孤児の少女「ナズナ」を助け、家族として迎え入れる。

数年後、新たな芸を取り入れようとする観阿弥は、大陸から帰ってきた妖艶な舞踊手・乙鶴に斬新な曲舞を習ううち、しだいに魅了されていく。家族と一座に走る亀裂―。

さまざま困難を乗り越えてきた観阿弥に大きなチャンスが訪れる。京都今熊野で、息子世阿弥とともに将軍足利義満の御前で舞うことが叶ったのだ。将軍の後ろ盾を得た観阿弥親子は一気にのぼりつめ、隆盛の中で、「民衆の中にあってこそ真の芸」と考える観阿弥と、「幽玄」の世界を求める世阿弥の対立が深まる。

観阿弥は、「芸とは何か」を世阿弥に諭しながら、「人買いから救った少女」を題材に、人々の本当の願いをこめた新たな作品を創り出す。

都から遠く離れた駿河浅間神社で、その作品「自然居士」を舞う観阿弥、熱狂する民衆。父の想いは、京に残った世阿弥の心にもくっきりと刻まれ、二人の心は時空を超えて結ばれていた。