
わたくしといふ現象は 仮定された有機交流電燈の ひとつの青い照明です
風景やみんなといっしょに せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける因果交流電燈の ひとつの青い照明です
宮沢賢治の詩集「春と修羅」の「序」の出だし部分ですが、私にはこの詩が描き出す光と闇の世界が、「銀河鉄道の夜」全体を包み込む気圏のように思えるんですね。この詩に浮かび上がる心象風景には、だれもが幼い日に見た幻燈写真のような懐かしさを感じます。
同じ懐かしさを、私たちは「銀河鉄道の夜」にも感じますよね。子どもの頃の私の周りにも、ジョバンニがいました。カムパネルラもザネリもいました。彼らのひとりひとりが、いまでも因果交流電燈の青い照明として私の中に灯りつづけています。
みなさんもどうぞ、この劇をご覧になりながら、懐かしい友だちのこと、お父さんやお母さんのこと、星になってしまった大切な人たちのことを思い出してください。
大切な人たちを思い出す。思い出すということが銀河鉄道の乗客になるということです。さぁ、心にたくさんの「青い照明」を灯す旅に出かけましょう!
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