劇団わらび座
2010年4月〜2013年3月 全国公演
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アトムについて
脚本・演出/横内 謙介すでにアトムの誕生日(2003年4月7日)も通り越した今、『鉄腕アトム』を、未来を描くSFファンタジーではなく、人々の記憶に深く刻まれた神話のように描いてみたいと考えています。
テーマは、人間ならざる者から人間たちに宛てて捧げられる、切なく哀しい「I LOVE YOU!」のメッセージです。
手恷。虫がアトムを描いた時、すでに人間は危うい存在でした。 地球を破壊し、互いに殺し合う、醜い存在。
そんな人間たちに救いの手を差し伸べるべく現れたのが、十万馬力の心優しい科学の子・アトムでした。
もはや神からも見捨てられた人間たちをもう一度信じ「君たちは素晴らしい」、「人間が大好きだ」と言ってくれる、小さな友人。 そしてその言葉通り、愚かな人間たちのために、命さえ投げ出してくれる最後の天使。
人間への愛のために、我が身を危険に晒して人間の悪と闘う、機械=アトムの自己犠牲の姿は、まさに神話的英雄の行為であると思うのです。
時代の状況は、手恷。虫がアトムを生んだ時よりも悪くなっています。 ますます人間の危機は迫っている。
こんな時だからこそ、孤独な人間たちに対して誰かが、「I LOVE YOU!」と叫んでくれる物語が必要だろう、と考えます。 たとえ今、我々人類が、比類希なるアトムの美しい魂から愛される価値のないものだとしても。 そんな人間たちが、せめて自分たちの寂しさに気付くためにも。