劇団わらび座

戎本 みろインタビュー

2005年2月収録

もともと芝居には興味があった?

こういう仕事をしていると、もともと芝居や歌が好きだったと思われるけど、全く逆で、歌は大っきらい。体動かすのも嫌いだったし、まして芝居なんて自分がやる職業という範疇になかった。中学を卒業するまで。

変わったのは?

高校のときに鬼剣舞に出会ってから。特に興味を持って始めたわけじゃなく、授業だから義務感で始めたんだけど。

そこで自分は?

戎本みろ

びっくりしましたね。自分で自分に驚いた。自分でもできるんだということに。鬼剣舞は10何分激しく踊り続ける。それを覚えるだけでも大変な作業だから、二ヶ月かけた最後の授業で最初から最後まで踊ったときの感動を今だに覚えてる。

どんな子どもだった?

おとなしい子どもだった。テレビや漫画が好きで、仮面ライダーとかウルトラマンの真似をしていた。

その頃好きなタレントは?

 小さい頃は大河ドラマが好きだった。祖母の影響で、日曜の夜になると、毎週見ていた。親が遅くまで仕事だったので、何気なくばあちゃんと一緒に見ていたら、だんだん見ているうちに歴史に興味がわいてきた。

小学校3、4年生のころ、お城が好きで、父さんと日本全国の史跡を見に行ったりした。地味な趣味というか(笑)。好きなタレントも歌手とかより、石坂浩二、加藤剛、滝田栄とか、大河ドラマに出ていた人たちが強烈に印象に残ってる。作品として好きだったのは「草燃える」。人物としては徳川家康。「独眼流政宗」も好きだった。しぶい子どもでしたね(笑)。

その影響で昔から時代劇が好きで、高校の時は市川雷蔵が好きだった(笑)。歌手とかアイドルとか現代に生きている俳優さんよりも、昔の人たちがかっこいいなぁと思う感覚の持ち主だった。(笑)それが今日に引き継がれている。

たくさんの作品に出ていろいろな役を演じていますが、役者人生をふり返ってみて?

戎本みろ

 舞台が楽しいなと思ったのは、「ヤンタ森へ行く」(ファミリー向けミュージカル。94、95年出演)。子どもたちとのキャッチボールがあって楽しかった。25歳頃。

「春秋山伏記」(96年出演)の源吉役では、その役の人生の重さに苦しみましたね。鉄槌を食らわされたような(笑)。人の一生をしょっていくじゃないですか、役者って。その重さに、これからやっていくことに限りない不安を覚えて・・・。他人の人生と向き合うということの重大さに、もっと早く気がつけばいいんですけれども、27、28歳頃だったかな。
わらび座がミュージカルを始めるようになって、人間として、役としてどうやっていくか、ということを大きく感じた役でした。

戎本みろ

気持ちよくやっていったのは「男鹿の於仁丸」の於仁丸(03、04年出演)かな(笑)。
人間として、こうありたいと思うのは「春秋山伏記」の大鷲坊(03年出演)。
源吉をやっているときにやりたいと思っていた役だったので、03年は於仁丸、大鷲坊と夢が叶ってすごく燃えた一年だった。屈折した役回りが多かったけれども、それが良かったと思う。

「龍姫」の七郎(97、98、01年出演)が一番苦労した。七郎は自分にとってライバルだなと感じがして。やっているときにも。
七郎という役は屈折しているようでいて、自分のやりたいことをとにかく真っしぐらに突き進んでいった。自分はそういう人間じゃないので、演じる上で「オマエには負けたくない」という気持ちを持ち続けてやってきた。
今思えば力量が足りなかったんだなと思う。もっと上には進めただろうなと。自分の中では大きな存在でしたね、彼は。

戎本みろ

俳優の仕事をしていて、本当に苦しいときは?

一つは、覚えが悪い(笑)。振りを覚えるときは、必ず人より遅れていくんです(笑)。技術的にできないってのは毎回直面する。人間を試される。

主役と脇役を区別する訳じゃないですけど、主役のプレッシャー、重さっていうのは、自分もタイトルロールをやってみたとき、これほど重たいものなのかと思った。生き方や価値観をうわべだけで演ずるとうわべだけでしか伝わらない。どれだけ自分がその人間性に近づけるか。

わらび座は長い期間一つの役をやるから、自分自身も成長しないと、うまくなるだけでは、自分の役も成長できない。日々生活していると、いろんな事があるし、いろんな人間関係が勃発してくる訳じゃないですか(笑)。

そうすると、何で俺は本番前にこんなことまで考えなくちゃいけないんだろうとか。でもそれにも対処していかないと、自分の成長もそれまでになっちゃう。

そこは一番苦しくもあり、でも楽しく、役と向き合う醍醐味じゃないかなぁと思いましたね。

俳優として自分に課していることは?

役の裏付けをきちんとしたい。 相手との関係を。

菊池准さんの演出(「山神様のおくりもの」99年)との出会いは僕の中で一つ転換期になっている。

戎本みろ

わらび座の役者は相手役とキャッチボールできていないとすごい言われたんですよね。例えば距離感がなかったりとか、不自然なものに気付かないでいたことがすごい衝撃的で。演出家の方々は入り口は違うけど、根っこはみんな同じ事を要求しているということもわかってきた。

そういう意味ではいつも思うのは、舞台で必要な世界を表現するためにイメージできるものをまず取り込んでいくということ。わらび座の作品計画が出されると、その役をやる訳じゃないかもしれないけど、「おっ」と思ったら、1年先2年先の作品でも、関係する本を買ってきて読んじゃうんです。
言われて突然準備するんじゃなくて、先取りして。

稽古に入るときは、しっかりした世界をもって臨みたい。
かといって、自分で作りすぎちゃっても相手との会話が成り立たなくなるから、相手が言っていることや相手の人生を、自分が耳を傾けることができるっていうか・・・。ちゃんとそこで創り合うということを大事にやりたいですね。

僕、初心がコロコロ変わるんです(笑)。初心は成長していくもの。
「自分はこうだ」と固執していくと、他の人の言葉とか受け容れられなくなっちゃうから。
よく言えば柔軟。悪く言えば節操がないというか(笑)

僕は民族芸能で育った人間で、わらび座の舞台ですぐに剣舞やる訳ではないじゃないけど、地元の人たちから受け継いできたものが僕とか地元に芸能を習いに行ったメンバーの中にある。しっかりと志の部分を受け継いで、そこから発展させていくことに役立てたいし、相手と信じあう、思いやりを持ち合うっていう事が民族芸能の一番大事な部分だと思う。

それは芝居を作る上で欠かせない所だと思うんで、そこはやっぱりこだわり続けていきたいな。

どういう役者になりたい?

その役が持つ華っていうか、役が持つオーラや空気をちゃんと出せる役者になりたいなってすごく思うんですよね。だから於仁丸をやってるときは於仁丸に必要なものや空気がそこにあり、大鷲坊には大鷲坊の空気があるというふうになりたい。

系統としては二枚目の役が多かったですけど、「棟方志功」では全くそうじゃない役をやるので、幅を広くしたい。「何やっても同じだね」って言われるのが一番悔しいから。ちゃんと変身していきたい。

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