末武あすなろインタビュー
2007年9月24日収録
■「観るの好き、一緒になって歌ったり踊ったりするのはもっと好き!」
子どもの頃は、今のわらび座の舞台に立つ原点になるような事をしていましたか?
3歳の時に初めておやこ劇場(親子で舞台芸術鑑賞や、様々な文化活動をし子どもの豊な感性を育むことを目的とした会員制の芸術鑑賞全国組織)に舞台を観に行ったときに、ステージの前で出演者にまじって、音楽に合わせて歌ったり踊ったりしていたそうです。 いま思えばその図々しさが、今の度胸を作り上げたのかもしれません。
その後も2、3ヶ月に1回はおやこ劇場でいろんな作品をに触れる機会があったので、自分にとって舞台を観ることは特別なことではなく、観て当たり前、観るの好き、一緒になって歌ったり踊ったりするのはもっと好き!という感じ。
ほかにはなにかやっていましたか?
小学校2、3年生くらいから高校卒業するまでピアノをやっていたんですよ。 あとは小学校6から中学校3まで韓国舞踊をやってました。
私、新潟の出身なんですけど、新潟と韓国って姉妹都市らしくて、家から通える所に韓国舞踊の教室があったんです。たまたまそのチラシを見た父親に「やってみるか?」と言われ、断る理由もなく「あ、うん、やります。」というのがきっかけ。 最初は大学生のお姉さん達の中に小学生1人だったので、何も考えずただ楽しいだけでしたが、徐々にのめりこんでいきました。
中学2年生の夏休みに母と二人で韓国に旅行に行ったり、ハングルを勉強したり、本格的にプロになろうかなぁと考えた時期もあったぐらい!まさに韓流ブームの先駆け!? その熱も高校に行ったら別のものに興味が行ってしまい、じんわりと冷めてきてしまいましたが。。
では、高校生からは?
高校生の時は演劇部。 演劇部に入ったのも私が体育会系じゃないからというのと、体験入部の時にいろいろみようと思ってたけど、どこに何があるのかわからなかったから・・・行きそびれているうちに演劇部が玄関に近かったから1回だけお邪魔して、そのまま入った。 もちろん理由はそれだけじゃないですよ!入りたいと思って入ったんですからね!
『ガラスの仮面』(演劇を題材にした漫画。演技の天才といわれる少女が才能を伸ばしていくストーリー)がマイブームで友達と『ガラスの仮面ごっこ』をしていて、自分の中では目を閉じて「私は○○」と心の中で念じて目を開ければ仮面をかぶって演技が出来る!と思ってた…とんでもない話でしょ(笑)
高校では生徒会にも入っていたから最初はそっちのほうが楽しかったんだけど、1年生の夏休みに「9月に大会があるからやるなら毎日練習に出て。来ないなら大会にも出れない。」と言われ、部活に顔を出すようになったら、すっかりはまってしまった。たった1回のために皆で毎日毎日練習するっていうのが楽しいなぁと思って。
舞台に立って拍手や照明を浴びることよりは、創っていく過程が楽しかったんですね。
このメンバーでもう1回やりたいんだけど、先輩達は卒業しちゃうし、それが叶わなくて切ない、でも思い出はいつもみんなの心の中に!!っていうこの『青春』!!これが高校演劇の醍醐味!!
■研究生としての舞台実習
では、その後わらび座に入ろうと思ったキッカケは?
一番最初に研究生の存在を知ったのは、「菜の花の沖」の新潟公演を観に行ったとき。パンフレットの隅に小さく「研究生募集」って書いてあったけど、その時は「こういうのあるんだ〜」ぐらいにしか思ってなくて、まぁいずれ受けてみようかなっていう興味はあった。
そしてどうして本格的にわらび座に入ろうかと思ったかというと…高校3年生の秋。演劇部の県大会出場が決まり、嬉しいんだけど、受験勉強しなくちゃいけないしどうしようと思ってました。 そのころ、雨が降った日に私達がいつも使ってる場所に野球部が勝手に使いにきてて。こっちは大会も近いし、どいうことだと野球部の顧問と口論になり、家に帰っても勘弁してほしいって気持ちをそのまま母親に怒りをぶつけ、「もう大学に行かない」とか言って・・・大学に行かないって思わず口をついて出たけど、言ったってことはきっと心の中でそう思ってたんだと。じゃあもう大学はいいやとあっさり。
けど、そうは言っても私絶対OLとか無理だからと思って・・・それで1週間くらい経ってから「あっ、わらび座に行けばいいんだ」って父親に言ったら「あっいいんじゃない」ってことでポンポンポンと話は進み、試験を受けて、受かり、わらび座に入ることになった。
研究生になり、舞台実習として初めてわらび座の舞台に立ったときはどうでしたか?
研究生1年目の年末に「銀河鉄道の夜」の稽古が始まって、その時研究生が12人(男性3人、女性9人)いて、男性枠が2人分、女性は3人分しかなかったから入れ替えながらの舞台実習だった。 私のほかにも何人か初日のキャストに選ばれなくて、見学という形で稽古に参加した。 稽古自体も初めてだから稽古風景を見ながら何を学んだらいいのかもわからなくて。いずれは出るけど自分の出番じゃないシーンは全然違う立場で見てるから「へぇ稽古ってこうゆうことするんだぁ」って。
初日の直前には、劇場での通し稽古とかも全然見れずに、研究生の授業もそっちのけで2週間くらいひたすら星球(舞台の背景に星空をつくるための小さな電球)を1万個とか7千個とか作りながら、自分達はこんなことやってて何やってんだ?ホントにうちら出れるの?って感じで・・・いずれ自分達が出る舞台だからと思って励まし合いながらやってました。 舞台に立てる喜びとかってことじゃ無くてまずは舞台の初日が始まって「星がついてるー!!!!」とかそういう感動で、素敵なエピソードがホントに無い・・・。
でもその後、舞台実習として舞台に立ったんですよね?
私は7、8、9月の3ヶ月出ました。 その写し稽古(キャスト入れ替え時に、今までやってきた人から新しい人に引き継ぐ稽古)の中で、やったことないアイリッシュみたいな踊りもあるし、「舞台とはどんなものか」というのも全然わからないし、毎日毎日怒られながらの稽古でした。その頃は舞台に立つことが精一杯だったし、とにかく怒られた記憶しかない。。。
■いきなりの主役抜擢
その後、研究生を卒業して役者として本格的にスタートをするわけですが――
研究生を卒業したある日、制作担当者に呼ばれて、「ヤバい!また怒られる!?」と思っていたら「ジョバンニに挑戦してもらいます」と言われた。何をどう解釈したのか「この1年間、演技の勉強をしろってことかな、それともケガしたときのアンダーとしてやるってことかな、まぁ月に1回ぐらいちょろっとやるんだろう」と思ってたの。そしたらダブルキャストで「え゛っ(そんなに出番があるの!?)」しかもジョバンニをやる回数も半々ぐらいと言われさらに「えっえっえっ???」みたいな。
いきなり主役に抜擢されたわけですけど、その時はどう思いました?
最初は全然ピンとこなくて頭の中は「???」状態。話が終わって部屋を出てしばらくしてから「うっわぁー!!どうしよう!!」ってパニクっちゃって。「さすがわらび座!私を選ぶなんて見る目がある」って思いもあり、「えっ、大丈夫なの!?私を使っちゃっていいの??」って思いもあり。 自分はやればできる子だと思いつつも、なんで私なんだろうって。
なるほど。その後、実際に主役をやり始めてどうでしたか?
まず稽古期間中は、全部自分のための稽古だからちゃんとやらなきゃっていう思いが強くて、気持ちだけが先走っていたなぁ。私以外の出演者は、わらび劇場で1年間演じてきた人や舞台経験のある人ばかりで、自分1人がすごく足を引っ張ってる感じがして、とてもしんどかった。
初日はとにかく恐怖でした。スタンバイして、開演前のアナウンスが流れて、ベルがなって…「あーどうしよう、今意識失えばやらなくてすむなぁ。事故が起きて中止にならないかなぁ。」って思うくらい緊張してた。初日があけて何回が場数を踏んでも、その緊張はしばらく続いてた。 役者1年目は「初舞台!先輩達からいろんなことを吸収しよう!」っていう次元じゃなくて、とにかくやるのに必死で、気付いたら1年が過ぎてた。6月に初めてジョバンニを演じてから10ヶ月の間に半分か三分の一ぐらいは私がやった。
■ケガ、それを乗り越えて得たもの
2年目はどうでしたか?
2年目は自業自得なんだけど、ケガをして舞台に穴を開けてしまった。ほかにも踊りの最中に人とぶつかって転んだ時に足の甲を捻挫したんですけど、そのことで先輩から怒られて「自分のせいでケガしたんでしょ」みたいに言われて、まぁそうなんだけど、それが悔しくて辛かった。 全国公演2年目はカムパネルラがキャスト変更して、わらび劇場で演じていた丸山(有子)さんに戻り、一緒に作品について話していくうちに、少しずつ自分なりのジョバンニを創れるようになっていった。 最初は、研究生のときに何回も観ていたので『銀河鉄道の夜』のイメージが出来上がっていたし、ダブル(1つの役を公演ごとに2人の役者が交代で演じること)でやっているから、ジョバンニをやってないときも別の役で出演しているし、作品や役を客観的に捉えきれていなかったから、「真似するんじゃなくて、あすなろのジョバンニでいいんだよ」と言われても、どうしたらいいかわからなかった。 2年目にケガで舞台を休んだことで、身体のこと、役のこと、作品のこと、何よりも自分自身についてちゃんと考えるようになったし、考え方も少し変わったのかな?1年目は初舞台、初ツアー、会場も違えばお客さんも違う、毎日が新鮮で浮かれて過ごしてたんだと思う。でも舞台に穴を開けて迷惑をかけて申し訳ない、ここで頑張らないとホントにヤバいと思って、きっと自分を奮い立たせたんでしょうね。1年半やってきて『銀河鉄道の夜』も終盤に差し掛かり、自分のジョバンニももうすぐ終わるから。本当はこんなに時間かからずにいけたのかもしれないけど、私には必要だったんでしょうね。
1年半でそれを得られたのはある意味よかったのかもしれないですね。
もし違う役だったらこんな経験はできなかっただろうし、もし『銀河鉄道の夜』でジョバンニをやらずにいきなり『笛じいちゃんとボクの宇宙』だったら…やっぱり出来なかったと思う。 でも全国公演2年間のうち1年半は、泣きながら、迷いながら、もがきながら、ただがむしゃらにやっていたので、プロとして本物の舞台を届けることができなかったんじゃないかなぁ…あんまり素直に喜べない。でもそれが今の「笛じいちゃんとボクの宇宙」にもつながってると思うからきっと良かったんじゃないかな。1年半かかったけど、その分、残りのラストスパート3ヶ月はギュッと濃く出来たかも。
■「結局自分達がたくさんの感動をもらってる」
「銀河鉄道の夜」で主役をやり、現在も「笛じいちゃんとボクの宇宙」の主役ですが、主役を連続でやっていて思うことはありますか?
主役ということよりも小班をやれた喜びの方が大きい!とにかく小班をやりたくて、前に『笛じいちゃんとボクの宇宙』(以下 笛ボク)の作者の栗城さんと面談をしたときに「どういう役をやりたいの?」と聞かれて、「於仁丸に出てくる小鬼とか小班をやりたいんですよ」って言ったら、本当に小班の話が来て嬉しかった。
なぜ小さなチームをやりたかったんですか?
私がわらび座の作品で一番好きなのは、小劇場で以前上演した『トラトラヘッポコ大冒険』なんです。会場全体が一つになって「みんなも一緒にやってみよう」っていう参加型の舞台が好き。 研究生時代の同期が出ているにもかかわらず、小さい子をさしおいて一番前で観たり、小学生の子と一緒に観に行って誰よりも大きな声で返事すると「やめて恥ずかしいから」って言われたけど、全然気にしない、そういうのすっごい好きだから。
じゃあ小さなチームでやるってゆうのは楽しみだった?
うん!研究生時代の同期は小班やりたいっていう人が多くて、いつかやれたらいいなって思ってたら話が来て、すっごく嬉しくて。 でも台本見たら「あっ、男の子…(苦笑)」、やっぱり主役といってもそっち(男の子役)かって(笑)。 笛ボクが初日をむかえ「発表会で笛が吹けない、もうダメだ」というシーンや、おじいさんに「気持ちを一つにして笛と太鼓を合わせるんだ」と言われ玲花ちゃんが「一緒に頑張ろう」って手を差し出して指切りをするシーンで、子ども達から「頑張れ!頑張れ!」って声援がくるの。ちゃんと観てくれてるんだぁ、嬉しいなって!
それはやっぱり小班ならではの醍醐味ですか?
銀河は宮沢賢治の世界観があったけど、笛ボクは子ども達の反応を受けながら作っていく作品だから、声援とかくるとホントに励まされて。「子ども達に舞台を通していろんなことを感じてもらいたい」と思いながら、結局自分達がたくさんの感動をもらってる。何か誰のためにやってるんだよって感じ(笑)。でもね、ホントに泣けるの、本当に。
舞台を見た子どもたちとのエピソードなどは――
あるの!あるの!! 舞台が終わって片付けをしてたら先生が「ちょっと待っててください!」って言うから何かなぁと思ってたら、今終わったばかりの舞台の感想文を1年生から6年生まで全員分持って来てくれて、しかも表紙にはその日の舞台中の写真を貼り付けてくれて。 私は作品の内容としては高学年向けで、低学年の子でも楽しめるようにお囃子や踊りがあると思ってたけど、1,2年生でもしっかり理解してくれてるんだよね。「耕太くんが笛吹けるようになって良かった」とか「ケンカしてて悲しかったけど仲直りできたね」とか書いてあるのを読むと、ちゃんと観てくれてるんだな〜って。思わず泣けてくるね。 絵を描いてくれる子もいて、じいさんの衣裳や、天体望遠鏡、リサイクルカーの細かいとこまでしっかり描いていたり、ケンカしてるのを先生が困った顔して見ていたり、1回観ただけなのによく覚えてるなって思って、こんなに真剣に観てくれてるんだから、中途半端なことは出来ないなって思った。
■素直によろこべない悩み、これからの挑戦
他には何かありますか?
全然いいエピソードじゃないけどホントに男の子だと思われてた(笑)。 女の子はだいたい「女の子でしょー」って、でも男の子は「えっ、男でしょ?」って言うの。それで顔のメイクを落とすのに女性トイレとか行くとがっかりされるというか「えっ!耕太君って女なの?」みたいな感じで。
数少ない一般公演でも、お孫さんと来てたおばあちゃんが私の顔じーっと見て「女の人だったの!」って言うの。 おばあちゃんとかはホントにホントに男の子だと思ってて「子役を使ってるのかと思った」って。 知り合いのホールの人にも、「2階のほうから見るとホントにクソガキにしか見えなかったよ」って(笑)。
役者ですから男の子に見えるっていうのはいいことなんですが、それが悩みでもあって…。 夏の小劇場で公演したとき感想文に「男の子としての立ち居振る舞いとかしゃべり方がすごく上手だったんですが、どういう努力をしたんですか?」と書いてあったときのこと。
お礼のお手紙を出すんだけどこの質問にどう答えたらいいのかなぁー。自分が小学生だった時を思い出したり、半分は意識的にやってるけど、半分は自然に出ちゃうから「私、素でやってるのかな〜」っていう悩みはちょっとあって…。今までやった役は主役といっても少年役だけだから、役者としてはどうなのかな?という思いがあります。
では、少年役しかやってない(笑)ということですけれども、今年5年目を迎えて「これからはいかにも女らしい役をやりたい!」など希望はありますか?
今年23歳なんで、25歳で女性の役をやるという人生計画というか、野望はあるんですけど。まぁ劇団がそれをどう捉えるか(笑)。大人の女性とかすっごく女性らしい役じゃなくて、女の子の役でもいいからやりたい。子ども役でもいいから、少年じゃなくて少女で!まずはそこから。「どうしてもヒロインをやりたい」というよりも、とにかく女役をやれたら演技の幅も広がると思う。けど難しいんじゃないかなー。
でも挑戦してみたいとは思います?
是非やらせてあげてください。どうか私に、役者として、子ども役だけじゃなくて女の人の役とか、いろんな役を!どうかお願いしますって感じですね。やりたいっていうよりも、このままいつまでも子ども役ってわけにもいかないんじゃないかな…って。
なるほど、楽しみにしていたいと思います。ありがとうございました。