亭主が死んだ。
故郷を離れ、さんざん苦労して、日本で初めての登り窯「龍窯」を築いて、藩主が将軍家に献上できるような立派な磁器が焼き上がるまでにした亭主・・・藩主から名字帯刀を許された亭主「辛島十兵衛」が死んだ。
息子、親戚、一族郎党が寄り集まり、「殿様のご使者、ご家来衆においで願っても恥ずかしくない、「辛島十兵衛」にふさわしい葬式を出さずばなるまい!」 衆議一致したそのとき、・・・異様な声がする・・・皆が驚いて声のするほうを見て腰を抜かした。十兵衛の女房、「百婆」が白髪頭を振り乱し、屋根にまたがり、北の方角にむかってすっくりと立ち、左手に亭主十兵衛の白衣を高く掲げ、叫んでいた。
「学生、鎮川、張氏、復ー」 (ハクセン、チンチョン、チャンシ、かえれー)
そして百婆は、苦楽を共に生きてきた亭主「辛島十兵衛」をクニのやり方で葬ることを宣言した。息子たちは大慌て。
百婆の知略が勝つか!日本人として生きていかねばならない息子達の想いがしのぐか!村中が大騒ぎに―――。 |